2022年9月11日、北アルプスの西穂高岳の独標付近から滑落した40代の男性が死亡しました。
会社の同僚2人と一緒に日帰りで西穂高岳に登っていたようです。
40代と言えばまだまだ体力があるため、これからもまだまだ山を楽しめた年齢。謹んでご冥福をお祈りいたします。
登山道から約100m滑落し40代男性が死亡 標高約2700mの西穂独標付近でスリップ 会社の同僚と2回目の登山 北アルプス西穂高岳・県警ヘリで救助も死亡確認 【長野】
出典:Yahooニュース
死亡した男性は登山2回目の初心者だったそうですが、西穂高岳は登山2回目の人が登る山ではありません。
新穂高ロープウェイを使って途中まで行けるので一見簡単なように思えてしまうかもしれませんが、特に独標(どっぴょう)から先は急峻な岩場が連続するため、
三点支持、フラットフィッティング、浮石への対処、適切な足場選び等、岩場に対処するための技術が必要です。
なぜ同僚の方は登山2回目の人を西穂高岳へ連れて行ってしまったのでしょうか?
これらのことを踏まえ、このような悲しい事故を防止するためには登山者はどのようなことに注意しておけば良いのでしょうか?
登山ガイドとして4つの遭難防止策をお伝えします。
[topic color=”orange” title=”この記事を読んでもらいたい人”]
- 登山初心者の人
- 登山をしたことが無い人
- 富士山に登ったことがあるから他の3,000m級の山も同じように登れると思っている人
- ロープウェイがある山は簡単だと思っている人
- 登山届を提出せずに登山する人
- 滑落するような山には行かないから自分には関係ないと思ってる人
- 遭難は他人事で自分には関係ないと思っている人
1.入念な下調べを自分でする
登山をする前に必ず必要なのは入念な下調べです。
たとえ自分が初心者で、登山ガイドや上級者の方に連れて行ってもらう場合でも、最低限の下調べはして下さい。
下調べの目的は、登る山のルートがどれくらいの体力が必要でどれくらいの技術が必要なのかを把握することです。
最低でも以下の内容については、登山をする前にしっかりと下調べしてから登って下さい。
- 登山ルート概要(国土地理院地図や山と高原地図で確認)
- 登山ルートの難易度(登山ガイドブック等で確認)
- 登山ルートの所要時間(登山ガイドブック等で確認)
- 同時期の登山道の状況(積雪や危険箇所があるかどうか等をYAMAPやヤマレコ(登山記録共有サイト)や等で確認)
- 登山口までのアクセス方法(登山ガイドブック等で確認)
- 登山当日の天気予報(てんきとくらすやヤマテン(有料サイト)、ネットや予想天気図で確認)
- 必要装備(登山道の状況や所要時間に合わせた装備を準備)
登山の必要装備については別記事に書いていますので参考にして下さい。
[kanren url=”https://y-hey.com/mountain-equipment-beginner/”]
計画8割、実行2割のつもりでいて下さい。
それくらい登山前の下調べは重要です。
2.自分の実力にあった山に登る
下調べをしっかりとしたならば、どれくらいの難易度の山かは、おのずと分かってきます。
今回事故のあった北アルプスの西穂高岳は「信州山のグレーディング」に掲載されており、上高地から入山するルートで「5D」になっています。
新穂高ロープウェイを使用すれば「4D」くらいに体力度は下がりますが、通常は西穂山荘で1泊し、2日目早朝から西穂高岳を往復して新穂高ロープウェイへ戻る行程になります。
日帰りですと帰りのロープウェイの時間があるため、下山時に焦りがあったのかもしれません。
Dランクがどれほど難しいルートかというと、
登山道の状況
- 厳しい岩稜や不安定なガレ場、ハシゴ・くさり場、藪漕ぎを必要とする箇所、場所により雪渓や渡渉箇所がある。
- 手を使う急な登下降がある。
- ハシゴ・くさり場や案内標識などの人工的な補助は限定的で、転落・滑落の危険箇所が多い。
必要な技術・能力
- 地図読み能力、岩場、雪渓を安定して通過できるバランス能力や技術が必要
- ルートファインディングの技術が必要
出典:信州山のグレーディング
同じ3000m級の岩山でも中級者向けで鎖やハシゴがしっかりと設置されている槍ヶ岳と比べると、
西穂高岳はそれほど鎖やハシゴは無く、滑落したら死に直結するような箇所が多いです。
このような難しい山へ行く場合は十分に下調べをした上で岩稜地帯を登るには、以下のような技術が必要になります。
- 三点支持
- フラットフィッティング
- 浮石への対処
- 適切な足場選び等
また、独標から先は危険個所が連続するため、ヘルメット着用が必要です。
ガイド登山の場合はお客さんのレベルに応じてロープで確保しながら登るエリアです。
このような難易度の高い山に登る時は自分の実力を過信せず、初心者は低山で岩場のある山や北アルプスの別の山でしっかりと訓練をしてから登るようにし、
経験者でも初めて登る場合は熟練者やガイドと一緒に行くと良いでしょう。
3.撤退する勇気を持つ
きちんと下調べをしたけど、実際に山へ行ってみたら
- 途中まで登ったけど山頂、下山まで体力が持つかあやしい
- 想定より技術的に難易度が高そうな道が目の前に広がっている
- 思ったより時間がかかってしまい、このまま進んだら日没になってしまう・・・
- 雨が降ってきて登山道が濡れて滑りやすくなってしまった・・・
このような状況になったら、迷わず撤退して下さい。
また別の機会を作って登れば良いのです。
山は常にそこに有り続けます。
生きていれば、またレベルアップして挑戦できるのです。
でも亡くなってしまっては、もう山に登れません。
もう、登れないんです。もう、二度と・・・
だから「生きて帰る」ために勇気ある撤退をして下さい。
4.登山届(登山計画書)を必ず作成・提出する
今回のパーティーは一緒に登っていた同僚が滑落に気づいたわけですが、単独行だと滑落しても目撃者がいなければ気づいてもらえません。
そのために登山届(登山計画書)があります。
どの山域のどのルートを通ってどの山にいつ登頂し、下山するのか?を明確に書面で残す登山届(登山計画書)を作成し、家族や友人に渡しておく必要があります。
登山届(登山計画書)を出していない場合、捜索願いを出しても、救助隊の捜索活動は広範囲に及び、発見までに多くの時間を要することになります。
(その分救助活動にかかる費用も膨大になります)
登山届(登山計画書)を作成する手順は別記事で解説していますので参考にして下さい。
▶登山届(登山計画書)とは?書き方や記入例、エクセルのフォーマットも紹介
[kanren url=”https://y-hey.com/climbing-notification/”]
登山計画を立てる時、下山もしくは山小屋到着は遅くとも15時までに着くように計画をしましょう。
9月になると日没が早くなるため、登山道が明瞭に見えづらく、事故につながりやすいです。
日没後は街のように明かりがあるわけでは無いため、ヘッドライトが無いと身動きが取れなくなり
ビバーク装備(ツェルトや防寒着)が無いと低体温症の危険があります。
▶【登山初心者必読】 日帰り登山でも絶対必要なあなたの命を守る持ち物とは?
[kanren url=”https://y-hey.com/dayhike-items/”]
無理のない計画を立て、安全登山を楽しんで下さい。
まとめ
登山でのこのような事故を防止するため、4つの遭難防止策を今回はお伝えしました。
初心者の方は特に、今回紹介したような下調べを入念に行い、自分の体力・技術レベルに合った山を登るようにしましょう。
また、初心者の単独行は避け、状況によっては勇気ある撤退も大事と肝に銘じて下さい。
この記事を読んであなたの安全登山にお役に立てれば幸いです。
最後までお読み頂き本当にありがとうございました。
遭難で最も多いのは道迷いです。
道迷い遭難の対策について↓の記事で書いています。
▶新潟 五頭連山で遭難した親子の結末を見て思うこと。道に迷ったら絶対に○○してはいけない!
[kanren url=”https://y-hey.com/mountain-disaster-niigata/”]
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