いつも当ブログを読んで頂きありがとうございます。
写真も撮れる登山ガイドの上田洋平(y-hey)です。
富士山といえば日本一高く、その標高は3,776m。
夏の登山シーズン中、その登頂の成否を分けるのは
「高山病の対策をどれだけできたか?」
が大部分を占めます。
今回はアフリカ最高峰キリマンジャロ(5,895m)や
南米最高峰アコンカグア(6,962m)等の高所登山をした自身の経験から
富士山等の標高の高い山(目安として2,000m以上)へ登る場合に
高山病にならないためにやるべき3つのこと
についてお伝えします。
高山病とは?
人間は酸素を吸うことにより、血液中のヘモグロビンを経由して体中に酸素を行き渡らせます。
その結果、各器官のエネルギーとして生命活動を維持しています。
この生命活動に必要な酸素は、標高が高い所へ行けばいくほど薄くなります。
(参考:安全登山のページ)
酸素が薄くなると当然ながら体の生命活動に影響が出てきます。
その顕著な症状が「高山病」です。
症状としては、息切れ、頭痛、食欲不振がまず起こり、
ひどくなると激しい頭痛、嘔吐、倦怠感、睡眠障害、
さらにひどくなると呼吸困難、めまい、視野狭窄、意識障害を引き起こし、
最悪の場合は、高地脳浮腫や肺水腫になって命の危険にさらされます。
(出典:日本旅行医学会HP)
高山病にならないためには?
楽しい富士登山も高山病になってしまっては台無しになりかねません。
ではどうすれば高山病を予防できるのでしょうか?
ポイントを3つにしぼって解説しましょう。
1.体を高度に慣らす
まずは体を高度に慣らすことが一番大事です。
一気に高度をあげると必ずと言っていいほど高山病になります。
特に富士山は車やバスで5合目(吉田口:2,305m, 富士宮口:2,390m, 須走口:1,970m, 御殿場口:1,440m)
まで移動できてしまいますので、もし平地(0m)から富士宮口まで行く場合、
一気に高度を2,390m上げてしまっています。
このように、体のほうが薄い酸素に慣れていないまま登山を始めてしまうと
あっという間に高山病になってしまう、というパターンが考えられます。
よく“五合目で1時間くらいゆっくり休んで高度順化してから登山を開始すると良い“
なんていう情報を目にしますが、個人的経験から1時間程度では全く高度順応できません。
可能であれば5~6時間は五合目に滞在したほうがいいでしょう。
(ただ現実的には山行の都合上2〜3時間くらいの五合目での滞在となると思います)
1日目の登山が終わり、山小屋に早く着いて時間に余裕がある場合は、
水分だけ持って30分程さらに登ってもいいです。
毎年ガイドとして登っている時、お客様にはこの方法で高度順応してもらい、95%以上の方が無事に登頂できています。
2.水を大量に飲む
高地では平地より乾燥している&登山での発汗により、体の中の水分は平地に比べて減りやすくなっています。
体内中の水分が減ると、血液がドロドロになり、
ヘモグロビンによる体の各器官への酸素供給がうまくいかなくなり、結果として高山病を発症してしまいます。
富士山に登る時には目安としては水分を、
登山前日: 3〜4L
登山当日: 平地〜五合目 2L
五合目~頂上 上り3L、下り1L
程度は取るようにして下さい。
これくらい水分補給をすれば高度順応しやすくなります。
※もちろんトイレに行きたくなりますが富士山では約1時間ごとに山小屋があり、深夜でなければトイレは使用可能(有料)です。
普通の水だけでこれだけ飲むのは苦行だと思いますので
経口補水液、スポーツドリンク、お茶等、色々摂取するのがおススメです。
↓で紹介しているアミノバイタルは水に溶かして飲むタイプです。
こちらはクエン酸入りで疲労回復に効果的なタイプ。やや味が濃い目なので水を規定量よろ多めに入れると良いです。
こちらはさっぱり味で飲みやすいタイプ。BCAA入りです。
登山当日か前日に1.5Lくらいに溶かして携帯し、さらにパウダースティックも持っていけば
山小屋で次の日の分を水に溶かして準備することができます。
経口補水液は汗で失われるミネラルも含まれているため、登山の時は非常に重宝します。
ただし経口補水液だけでは味がイマイチなので、私がつくっているオリジナルドリンクのレシピをお伝えします。
アミノバイタルクエン酸チャージ :2本 水1L
経口補水液パウダー:1本 水0.5L
合計 1.5Lの水に3本のパウダーを溶かします。
これくらいで味が濃すぎず、ちょうど良い感じに仕上がりますが、お好みでパウダーや水の量を調整して下さい。
余談ですが私はキリマンジャロ(5,895m)に登る時は1日4Lの水分を、アコンカグア(6,962m)に登る時は1日5Lの水分を摂るよう現地ガイドや現地の医師からアドバイスを受けました。
富士山はそこまでの高山では無いにしろ、3,776mと高山病になるには十分?な高さですので、しっかりと水分補給をして高山病予防をしましょう。
登山中ならザックの中にいれて少しずつ水分補給ができる、ハイドレーションがおススメです。
これがあればザックを下ろさなくてもコマメに水分補給ができます。
また、富士山登山シーズン中(7月中旬~9月初旬)は山小屋が開いています。
(シーズンの詳しい日程は毎年変わります。詳しくは富士登山オフィシャルサイトでチェックして下さい)
不足分は山小屋で購入するのはアリですが、普段買う価格よりかなり高いです。ペットボトル1本500円くらいしますのでご注意下さい。
3.深い呼吸でゆっくり登る
高山病にならないためにすることの最後の3つ目は、一度に大量の酸素を消費しないようにします。
具体的には、「ゆっくり登る」ことと「深い呼吸」をすることです。
ゆっくり登ることは、とりわけ重要です。
登山口である五合目付近ではどうしてもペースが上がりがちになりますが、そういう登山者に限って8合目以降では高山病発症、
もしくはバテてしまい登山中止を余儀なくされることもあります。
そのため、
おじいちゃんやおばあちゃんが歩くようなペースで、歩幅を小さくして登りましょう。
また深い呼吸をすることも大事です。
息を吐く時、口笛を吹くように口をすぼめ、30cm先にあるロウソクを3秒かけて消すイメージで、「しっかりと吐ききる」ことが重要です。
しっかり吐ききれば、自動的にいっぱい息を吸えます。
また、急な段差等で足を大きく広げて登った場合は一旦立ち止まり、「ふぅ」と一呼吸、余分にしてから次の歩を進めるといいです。
やってはいけないこと
やるべきことを書いたので、やってはいけないことも書きます。
基本的には上で挙げた反対のことはやってはいけません。
具体的には
・高度順応せずに登山を開始する
・水分をあまり摂らずに登る
・ハイペースで登山する、または走る
こういうことをすると一発で頭痛のプレゼントがあります(笑)
それに加えて“やってはいけないこと”は以下です。
酒を飲む・タバコを吸う
お酒には利尿作用があり、体内の水分を出してしまうため、酸素が体内に行き渡らなくなります。
また、お酒には呼吸を浅くする効果もあるため、深い呼吸ができなくなります。
タバコは全身の毛細血管を収縮させる効果があるため、血管が収縮=酸素の通り道が狭くなる
となり、酸素が体内に行き渡らなくなります。
そしてその結果、高山病になりやすくなります。
お酒やタバコは下山後の楽しみにとっておきましょう。
酸素缶ってどうなの?効果あるの?
よく売っている酸素缶ですが、これで酸素を吸っても効果は限定的です。
なぜなら一息か二息くらい酸素を吸ったところで、大した量ではないからです。
実際に私も富士山に初めて登った時は使ってみましたが「効いた気がする」程度でした。
缶の容量も通常はたったの5Lです。
酸素を吸うのであればエベレスト登山のように酸素ボンベ(1200L)を背負って登るべきですが
富士山ではそこまでする必要はありません。
それよりもこの記事で紹介している3つのこと(高度に慣らす、水分補給、深い呼吸でゆっくり登る)を実践してみて下さい。
必ずあなたの高山病対策になります。
もし高山病になったら?
高山病のなりやすさには個人差がありますので、以上のようなことを守っても、絶対に高山病にならないとは言い切れません。
もし高山病になってしまったらどうすればよいのでしょうか?
それは・・・
高度を下げることです。
はっきりいってこれしか無いです。
私は子供の頃、旅行でスイスのユングフラウヨッホの展望台へ行ったことがあります。
その時は登山電車や地中エレベータで一気に展望台の高度3,571mまで上げたため、
展望台で激しいめまいにやられ、さらに視界が狭くなって(このまま死ぬんだろうか・・・)なんて子供心に思っていました。
しかし再び登山電車等で高度960mの場所まで戻ったらウソのように症状は治まりました。
もし高度を下げても症状が良くならない場合は、いさぎよく下山しましょう。
山は逃げません。常にそこにあります。
また次回、しっかりとトレーニングや準備をして挑戦すればいいのです。
まとめ
富士山の登山で高山病にならないためにやるべき3つのこと
としてまとめましたがいかがでしたでしょうか?
- 体を高度に慣らす
- 水を大量に飲む
- 深い呼吸でゆっくり登る
この3つのうちどれかが欠けただけでも、高山病のリスクが高まりますのでご注意下さい。
これらの方法は富士山登山に限ったことでは無く、2,000mより標高の高い山に登る時や
旅行で高地(南米ペルーのクスコやマチュピチュ、チベット等)に行く時には必ずやっておくべきだと思います。
これらの方法を実践することにより、あなたが高山病にならずに
富士山を無事に登頂できることを祈っています!
この記事を読んであなたの登山ライフがちょっとだけ豊かになれば幸いです。
最後までお読みいただき本当にありがとうございました。
富士登山が初めての人が読んでおくと良い本
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