南米最高峰アコンカグア単独登山記【8】まさか自分が〇〇〇になるとは・・・
こんにちは!アウトドアライフクリエイターのy-heyです。
2013年12月に南米最高峰アコンカグア(6,962m)に単独登山してきた記録の第8弾です。
今回は登山の成否に関わる重大な事実が発覚します。
前回の記事ではキャンプカナダ(5,050m)まで再び高度順応のため登る時、友人の優しさに触れたエピソードを紹介しました。
▶南米最高峰アコンカグア単独登山記【7】キャンプカナダ(5050m)が限界?
登山9日目 2013年12月29日(日)
Plaza de Mulas(プラザ・デ・ムーラス, 4367m)で休息
ベースキャンプで登山9日目の朝を迎えます。
日が出るまではどれだけ着込んでも寒く(-5℃以下でのテント泊です)、寝袋にずっと包まっていたい衝動にかられ、今日は休息日ということもあり、ゆっくり9時くらいに起床。
しかし、どうも起きてからも息がゼェゼェする。SPO2(血中酸素濃度)の値を測定してみると、81。
この4,367mにあるベースキャンプついてもう既に5日目だし、高度順応のために5,000m付近まで2度登ったけど、もう少し高度順応していないとこの先つらいなと思いました。
お昼頃にネットができる業者のテントに天気予報チェックに行きました。
12月30日~1月2日までは強風のためとても登れる状況じゃないという予報。
後で聞いた話だがこの期間はベースキャンプより上のニド・デ・コンドレスから上は危険なためレンジャーによって閉鎖されたようでした。
そんな状況で上に登っても頂上まで到達できないし、帰りのメンドーサ発の飛行機は1月5日のため、これに間に合わせるには遅くても1月2日に頂上に到達しないといけないわけです。
その場合、1月3日にベースキャンプ、4日に下山、5日に飛行機に乗るという予定になる。
しかし、その頂上到達予定日である1月2日は台風並みの強風。
アコンカグア頂上付近はさすがに南米最高峰だけあって風を遮るものがないため、その風はまるでジェットストリームの様という話。
とりあえず途中までなんとか登って、天気予報が外れて実際には風がおさまるのを待つしかないのか。
y-hey
と考えていた矢先、息苦しさがなかなか収まらず、アコンカグアに来る前からずっとひいていた風邪も悪化して咳が止まらない状態が続いたため
ベースキャンプにある診療所で一応見てもらうことにした。
I can’t stop coughing and having a difficulty to breath.(呼吸が苦しくて咳が止まらないんです。)
y-hey
ドクターは聴診器でy-heyの心音や呼吸を確認すると、
You got water in your lungs. You must go down right away. (あなた、肺に水が溜まっているわよ。すぐに降りなさい。)
ドクター
と、衝撃の一言が!!!
肺に水が溜まっているということは・・・ 肺水腫!?
これは↓の記事でも書きましたが、高山病でも重度の症状。
この時点でy-heyのアコンカグア登頂の夢は儚く潰えました。
複雑な気持ちでした。
日本にいる時から1ヶ月間ひたすら準備し、会社から有給も取りまくり(3週間以上)、現地に着いてからも登山手続き等の準備もした、その苦労が徒労に終わった・・・
という思いと
息苦しく、体調もあまりすぐれなかったので、やっと降りれるんだという思いと・・・
そして大体分かってはいるんですけど一応ドクターに聞いてみました。
Is there any way to train durability for high altitude?(高度に対する耐性っていうのはなにかで鍛錬できるんですか?)
y-hey
No, it’s a generic thing. (いいえ。これはその人がもって生まれた資質によるの。)
ドクター
この一言で、いつかは登りたいなぁと夢に見ていた世界最高峰、エベレスト8,848m登頂の夢も潰えました・・・
これは高所登山に対する一登山者への死刑宣告に等しい一言でした。(英語で言われたから余計冷たく感じます)
思えば2012年の12月、南アフリカ出張のついでにタンザニアに行ってアフリカ大陸最高峰キリマンジャロ(5,895m)に登れたことで山に対する情熱に火が付きました。
▶アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ(5,895m)登山(ロンガイルート)前編
▶アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ(5,895m)登山(ロンガイルート)後編
2013年は仕事もほどほどにして山に情熱を注ぎ込み、
2月:北横岳雪山登山(八ヶ岳)
3月:天狗岳雪山登山、横岳雪山登山(八ヶ岳)
5月:本宮山 2回(子供を背負って)(愛知)、玉置山(子供を背負って)(奈良)
6月:木曽駒ヶ岳・宝剣岳(中央アルプス)、富士山(残雪期)
8月:槍ヶ岳(北アルプス)
9月:硫黄岳・横岳・赤岳(八ヶ岳)、釈迦ヶ岳(三重)、入道ヶ岳(子供を背負って)(三重)
と妻子持ちサラリーマンにしては良いペースで山に行って、
平日は毎日10kg以上の重りを入れたザックを背負って会社のビルの階段を11階まで登り下りを
一年間休むこと無くトレーニングもしていたのですが、それでもアコンカグアを登頂するには至らなかったようです。
また、最後のドクターの一言で自分が6、7,000m以上の高所登山には向いていないということを身をもって知りました。
今まで山に注いできた情熱が大きかっただけに、これは非常にショックでした。
エベレストに登れない体だと自分が認識するというのは山登りに対する情熱自体に多大な影響を及ぼすのです。
その辺の低山じゃ満足できないけれど高山には登れない身体というジレンマ!
夕日に照らされたアコンカグアが一層雄大に見え、自分の心と対比しているようでした。
・・・・・
それはともかく、ベースキャンプ(4,367m)から下山をしないといけないです。
ドクターにヘリを呼んでもらえるかなぁ?
y-hey
なんて淡い期待もちょっぴりありましたが、ヘリを出す程重症ではないということで普通に歩いて下山することになりました。
約8時間の行程を行くには既に夕方のため無理だったので一日寝て、次の日(12月30日)の朝に出発することにしました。
2013年12月30日(土) 登山10日目
Plaza de Mulas(プラザ・デ・ムーラス, 4367m)~ Confluencia(コンフルエンシア, 3414m) ~ Horcones(オルコネス, 2900m)→ Penitentes(ペニテンテス, 2615m) → Mendoza(メンドーサ, 761m)
涙をのんで山を下りる時が来ました。
でもその前に、実はキャンプカナダ(5,050m)に荷上げした荷物を残置したままでした!
肺に水が溜まった状態ではこれ以上高度を上げて取りにいくこともできないためドクターストップがかかった29日の夕方に
ドクターと登山エージェントに相談してポーターの人に荷物を取ってきてもらうことにしました。
当然無料というわけにはいかず、最初はベースキャンプ~キャンプカナダ間の荷上げの料金である120US$を請求されましたが、
・今回は荷上げではなく、荷下げなので体力的に楽なこと
・荷物が10kg以下のため軽いこと
の2点を強調して、エージェントの上司まで話して80US$くらいに割引してもらいました。
まさか自分で荷上げした荷物を他の人に取って来てもらうことになるとは情けないですが、この状態では致し方ありません。
y-hey
次の日の朝の出発予定時刻の8時30分までに取って来て下さい。としっかりお願いをしておいた甲斐もあり、出発日である30日の時間までに荷物を取って来てくれました。
取って来てくれたのは女性のポーターでした。
女性でアコンカグアのような高山でポーターって、かっこいいっすね!
y-hey
と思うのと同時に荷物を取ってきてもらわないといけない自分を腑甲斐無く思いました。
テントを畳んで出発準備は完了です。
しかし、ムーラ(ラバ)にダッフルバッグを運んでもらう手はずを整えていたはずですが、エージェントのスタッフがどこにも見当たりません。
結局9時30分くらいまで待ったら、どこからかパジャマ姿で現れました。
さすがアルゼンチン、みんな夜遅くまで騒いでいるせいか、ゆっくり寝ています。
y-hey
なんとかムーラへの預け入れも完了し、最後にベースキャンプのレンジャー小屋に行ってチェックアウトの手続きをします。
そしてここではベースキャンプのチェックイン時にもらうPoo bag(う○こ袋)を返却しないといけません。
ベースキャンプより上のキャンプにはトイレが無いためキジ撃ち(野グ○)をした場合、便を分解する微生物もこの高度ではいないためそのまま残ってしまうのです。
なので大便をこの袋に入れて持ち帰りましょうというコンセプトなのです。
でもこの袋の中に直接、便を入れたら大変なことになるので通常は自前の袋を2重、3重にしたりジップロックのような密閉できる袋を活用しているようです。
y-heyの場合はベースキャンプより上のキャンプでは泊まることが無かったので、この袋のお世話になることはありませんでした。
とまぁそんなコンセプトの袋のため、y-heyがチェックアウトする時は
上のキャンプで泊まっていないので使っていません。
y-hey
とレンジャーに伝えると、たやすく了解してくれました。
出発の日の朝、以前お会いして写真を一緒に撮って頂いた
プロトレイルランナーの石川弘樹さんの仲間の方に「今日下山することになりました」と伝えたら、
後で石川弘樹さんが仲間からその話を聞いたらしく、y-heyのテントに来てくれてお別れの挨拶をしてくれました!
そして最後は石川さんとアルゼンチン式のハグをして別れました。
これはすごい嬉しかったです。これからの下山に対する元気を分けてもらえました。
石川さん達は帰りの飛行機がy-heyと同じ1月5日らしいので
強風吹き荒れる現在の天候だと日程的にはかなり厳しいかと思いますが、ぜひとも登頂してもらいたいものです。
まとめ
肺水腫というのは、本で読んで聞いていた名前ですが、まさか自分がなるとは・・・
自分的には生物学的な限界だったようです。
y-hey
そして自分が高所登山には向いていない身体であることを知るという、精神的に辛いエピソードをお伝えしました。
とは言っても下山はしないといけないので、次回登山編(というか下山編)最終回に続きます。
現在募集中のツアーは↓です!
みなさんとお会いできるのを楽しみにしています(^o^)