登山ガイド 二次試験 安全管理技術基礎 検定 備忘録
いつも当ブログを読んでいただきありがとうございます。
アウトドアライフクリエイターのy-heyです。
2019年3月4(月)〜5日(火)の1泊2日で日本山岳ガイド協会が主催する登山ガイド 安全管理技術 基礎 検定を受験してきました。
この検定は登山ガイドステージIを取得するための二次試験(無雪期ルートガイディング検定、安全管理技術検定、危急時対応技術講習会)の内の一つです。
この検定を受けるにあたり大変多くのことを学んだため、気づいたことを備忘録としてまとめます。
開催場所
↑は宿泊した民宿「ログキャビンしおや」の前の桜並木。3月上旬ですが河津桜がかなり咲いていました。
ここは無雪期ルートガイディング講習でもお世話になった場所です。
検定場所は神奈川県松田町丹沢の寄(やどりぎ)の近く、1日目は雨のため屋内で、2日目は宮地山で行われました。
参加者
参加者:24名(男性 20名、女性 4名)
講師:4名
結構な大所帯でした。2018年10月に受けた上高地での資格試験対応講習会や無雪期ルートガイディング講習でお会いした方々と再会できて嬉しかったです!
y-hey
検定を終えて(y-heyの備忘録)
検定内容については、試験を申込み後、試験日のおよそ一ヶ月前に届く「集合案内」に記載されていますので、それをしっかりとやりこんでおくことが重要です。
検定内容について直接書けないため、ここから先に紹介する内容はあくまで「y-heyが検定を終えた後の備忘録」として紹介します。
※備忘録は2019年3月時点のものです。今後内容が改訂される場合はその指示に従って下さい。
写真も当日は撮影禁止だったので、別日に個人で撮影しました。
ロープの結び
フィギュアエイト・フォロースルー
- 基本の結びのため、目をつぶってもできるように何度も練習しておく。
- ダブル・フィッシャーマンズ・ノットで末端処理を終えた後の末端までのロープ長さはロープ径の10倍以上(8mmロープなら8cm以上)
フィギュアエイト・オン・ア・バイト
- 基本の結びのため、目をつぶってもできるように何度も練習しておく。
- ダブル・フィッシャーマンズ・ノットで末端処理を終えた後の末端までのロープ長さはロープ径の10倍以上(8mmロープなら8cm以上)
クローブ・ヒッチ
- サクッとできるようにしておく。
ガース・ヒッチ
- スリングの縫い目(=最弱部位)の位置が対象物の背面になると良い。
ボーライン(自分、顧客や自然物に)
- 結んだ後にたるみがないように。
- 末端処理を終えた後の末端までのロープ長さはロープ径の10倍以上(8mmロープなら8cm以上)
ムンター・ヒッチ(自分自身が懸垂下降する場合)
- 懸垂下降後にロープを回収することを考慮し、ダブルロープで行った。(指導員によって違うかも)
- 自分のビレイループに装着したHMSカラビナにムンター・ヒッチを作る。
- ムンター・ヒッチを作ったらすぐにカラビナのゲートの安全環を閉める。
- 下る時はロープの送り出しをする側はカラビナのゲートと逆側。
(ゲート側だと送り出しロープの摩擦でゲートが開いてしまう可能性があるため、最悪ムンター・ヒッチが解け、墜落事故に繋がる)
ムンター・ヒッチ(顧客を降ろす場合)
- 顧客のハーネスに安全環付きカラビナ+フィギュアエイトで繋ぐ。
- ムンター・ヒッチを作ったらすぐにカラビナのゲートの安全環を閉める。
- ロープの送り出しは送り手でスムーズに行う。
- 下る時はロープの送り出しをする側はカラビナのゲートと逆側。
(ゲート側だと送り出しロープの摩擦でゲートが開いてしまう可能性があるため、最悪ムンター・ヒッチが解け、墜落事故に繋がる)
オートブロック(マッシャー)
- カラビナをスリングにひっかけ、カラビナ側を起点に巻いていくと巻きやすい。
- 縫い目はカラビナと逆側にして巻き始めると巻きやすい。
- 幅の狭いダイニーマ製60cmスリングだと効きやすい。幅の広いナイロン製は巻くのが大変。
クレイムハイスト
- カラビナをスリングにひっかけ、カラビナ側を起点に巻いていくと巻きやすい。
- 縫い目はカラビナ側だと巻きやすい。
- 輪を通して引っ張る方向に注意。逆だと効かない。
- オートブロックと同じく、ダイニーマ製スリング推奨。
シートベントによる簡易ハーネス
- スリングの縫い目が背中側になるように結ぶ。
- 女性の顧客に結ぶ場合は正面から結ぶとキワドいため(笑)、背中側でシートベントを結んで正面側に回転させるほうが、いろんな意味で安心。
- ハーネスには幅の広いナイロン製スリングのほうが引っ張られた時に痛くないのでベター。
固定ロープ
始点
- ボーラインまたはフィギュアエイトで支点(立ち木)に直巻き
- 直巻きする際はロープを2重に巻くと、ロープが下にずり落ちない
- ロープの高さは肩〜腰の間
中間支点
- スリングとカラビナを使ってガース・ヒッチで支点に固定
- カラビナにクローブ・ヒッチでたるみの無いように結ぶ
終点
- スリングとカラビナ、直巻きどちらでも可
- スリングとカラビナを使ってフィギュアエイトやクローブ・ヒッチで固定したほうが早い
顧客の誘導
- ラビット・ノット等にカラビナを2つかけたものをガース・ヒッチで顧客のハーネスに繋ぐ
- 動作手順をしっかりと顧客に伝える。(なるべく実演しながら説明する。普通の顧客はカラビナ等を使ったことが無いため、しっかりと説明しないと事故に繋がる)
- 顧客には両手ともカラビナ直下のスリング部分を持たせる
- 安全な場所まで来たら声かけをして顧客のビレイ解除
懸垂下降
顧客を下降させる
- ムンター・ヒッチにより下降させる。
- 顧客のハーネスに安全環付きカラビナ+フィギュアエイトで繋ぐ。
- HMSカラビナにムンター・ヒッチを作ったらすぐにゲートの安全環を閉める。
- 下る時はロープの送り出しをする側はカラビナのゲートと逆側。
(ゲート側だと送り出しロープの摩擦でゲートが開いてしまう可能性があるため、最悪ムンター・ヒッチが解け、墜落事故に繋がる) - ロープの送り出しは送り手でスムーズに行う。
腕がらみ下降
- 高価なレインウェアで腕がらみ下降すると、摩擦熱によりウェアが痛む可能性があるため、安めのウェア推奨
- 長袖推奨。半袖だと摩擦熱により手が火傷する。
- ロープ回収することを考慮し、ダブルロープにする。(末端同士はオーバーハンド・ノットで結び目を作る)
- ザックを背負ってやる場合は、ザックの上側からロープを通すとスムーズ
ザック搬送
- 60cmスリング✕2、カラビナ(環付きで無くて可)✕2を使う。
- ザックの下側にはクッションになるもの(着替え等)を入れておくと要救助者が快適に乗れる。
- スリングを2重にしてガース・ヒッチでザックの肩ベルトに固定し、クロスさせる。
- 要救助者のハーネスのレッグループにカラビナをかける。
- ザックと同時に要救助者を背負う。
- スリングを要救助者の肩からかけて自分と固定しておくと要救助者が意識を失っても落ちない。
ツェルト設営
- 場所選定も含めてツェルト設営完了まで10分程度(10分を越えたら失格!というわけではないが大幅に越えるとマズいかも)
- ツェルト形態はテント型(タープ型やかぶるだけの使い方は検定では行わない)
- 場所は平らな場所が望ましい
- 立ち木を利用してロープを固定し、オートブロック等を使ってツェルトを引っ張り上げ、下はペグで固定して設営する
講習内容 備忘録
検定とは別に、「講習」として受ける内容もありました。
1/3 引き上げ
- 顧客が斜面へ落下した状況を想定
- 立ち木等へスリングとカラビナを使ってビレイし、ムンター・ヒッチで懸垂下降して顧客の所まで下る
- 顧客のハーネスへカラビナを使ってロープ末端を繋ぐ
- ロープを補助として使って自分はビレイ地点まで登る
- ムンター・ヒッチにミュール・ノットで仮固定し、その後オーバーハンド・ノットで本固定する
- オートブロックで固定し、カラビナをムンター・ヒッチのカラビナ(ゲートと反対側)にかける
- クレイムハイストで固定し、送り側ロープをかけ、1/3引き上げシステムを構築
- ロープを引き上げる時は90度の角度をつけてロープを握ると、ロープの荷重を受け止めれるため引き上げやすい
ショートロープ
- 30mロープの約半分をザックにしまう(2気室の場合は下側にしまうとロープの送り出しがスムーズ)
- ロープ末端はフィギュアエイト
- ザックから出ているロープをビレイループに通した安全環付きカラビナへクローブ・ヒッチで結ぶ
- ループを作って肩に掛ける(ループは4〜8回で、7m程度残す)
- ビレイループにバイトを作って通し、ループに2回巻きつけ、顧客側のロープにオーバーハンド・ノットで固定
- 顧客側のロープから手に巻いてコイルを作る(ループ数は3〜4回)
- コイルを逆側の手に持ち替える
- 顧客側ロープを手の甲で巻き取り、中指と人差し指の間から出す
- 顧客側から引っ張られても手の甲ですぐにテンションがかかるか確認
- 登りはガイドが先、下りは顧客が先
- 常にテンションは張り気味にし、顧客の転倒に備える
- ロープのコイルは谷側で持つようにする(顧客が転倒した時にガイドの体が反転しないように)
登山ガイド 安全管理技術 基礎 検定 を受けるに当たっての心構え
僕も検定を受ける前は緊張でチビリそうなガクブル状態で望みましたが、検定員の方が優しい方だったせいか
「落とすための試験ではありませんので、リラックスしてやって下さい」
と言ってもらえたため、練習してきたロープワークを落ち着いて行うことができました。
ただし、中には全く練習をせずに参加されている方もいましたので、さすがにそれではマズいと思います。
ロープワークは自分が登山ガイドになった時に顧客の命を守る最重要な技術。
それができないガイドは人の命を守れないと考えます。
これは「講習」では無く「検定」です。
自分のやってきたことが試される場です。
全く練習せずにこの場に来るということ自体、ちょっとどうかなと思います。
厳しい言い方かもしれませんが、そのような方に自分の命を預けることはできません。
ガイドを目指す方はしっかり練習した上で試験に臨んで下さい。
こんなこと書いておいて自分が試験に落ちていたらアホですが・・・
y-hey
まとめ
というわけで備忘録としてこの記事を書いてみましたが、結構濃い備忘録になった気がします。
(写真は夕食のぼたん鍋(猪鍋)。泊まらせてもらった民宿「ログキャビンしおや」は猟師の宿でもあります。)
特に1/3引き上げのような緊急時の技術は以前、講師の方が
「完璧にできるようにしておいて一生使わないのが、ガイドとして理想」
と言われていたのを覚えています。
まさしく、そのような状況を未然に防ぐことが登山ガイドの真の役目かと思います。
y-hey
ロープは定期的に触る機会をつくり(クライミングや自宅で練習等)
技術に磨きをかけ、登山ガイドとして、いざという時に対応できるようにします。
この記事を読んであなたのロープワークの参考になれば幸いです。
最後までお読み頂き本当にありがとうございました。
現在募集中のツアーは↓です!
みなさんとお会いできるのを楽しみにしています(^o^)
Comment
お疲れ様でした!!
備忘録読んで試験思い出していました。
使わなければ1番ですね。使うとき完璧にやれるよう日々トレーニングが本当に大切だと実感して来ました。これから新しい物や技術も変わるかも知れないので常に最新の技術、装備で望めるよう自分も頑張ります‼️
佐藤さんも検定、そして利尻までの往復お疲れ様でした!
まさにこういう危急時の技術は使わないに越したことないですねー。
お互い最新の技術を常に学ぶ姿勢で頑張りましょうね!
山登りって色々と準備が大変そうです。
でも、最後にぼたん鍋みたいな美味しいゴハンが待っているならなんでも頑張れちゃいますね!!
ENOさん、コメントありがとうございます。
山登りの準備は大変ですが段取り力や想像力が付くので良いですよ。(仕事にも応用できます)
ぼたん鍋はホントに美味しかったですよ(^^)